ウルティマオンライン・出雲シャードで活動中のRPギルドです。


by Izumo_FoA

カテゴリ:三つの祭器~活動報告( 1 )

三つの祭器。

 使徒Dunkelは、一つの結論を得た。

 かつて無知であった頃の自分が仕え、本当の教義を悟るため出奔した際に持ち出した三つの「祭器」を、再びこの手に収めることを。

 手元に残しておいた、一つの教本。
 そこに書かれていた、忌まわしくも凶大な知識。

 禍々しいエルフどもが巣くうハートウッドを滅ぼし、穢れた王都ブリティンを崩すには十分すぎるであろう力を約束する、三つの「祭器」がもたらす和音。
 手に入れる。
 使徒Dunkelは、兜の下で大きく笑みを浮かべた。



 一つ目の祭器【魂解放之刃】は、王都ブリティンに。
 二つ目の祭器【地獄見之玉】は、副都市トリンシックに。
 三つ目の祭器【無道心之首】は、魔道都市マジンシアに。

 それぞれが厳重な都市の中にあり、今のFoAの武力では強引に奪取することは危険すぎる………使徒Dunkelの上に新たに君臨した、最高幹部を名乗る小僧Storasの手を借りるなど、彼の矜持が許すはずも無い。
 ならば。
 あの爺と、冒険者を名乗る連中を利用すれば良いだけの事…………


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 面白いぐらいに、事は上手く進んだ。
 三つの「祭器」は僧院の爺の元に揃い、冒険者どもは何も疑っていない。武勇だけを頼みにしてきた使徒Dunkelにとって、これほどの上首尾となるとは思いもしなかった。
 後は奪うのみ。
 警戒の緩い僧院を襲撃することなど、使徒Dunkel一人であっても十分。けれど、油断はしないほうが良い。誰か別の手を、念の為に用意しておくのが良いかも知れぬ。

 使徒Tifatis。

 使徒Dunkelとは異なる魔術の使い手であり、冷静な思考と判断を下せる魔女。戦士である使徒Dunkelには扱えぬ魔術の援護があれば、事は更に容易に進むだろう。



 全ては上手くいった。
 危うく祭器【地獄見之玉】を奪い損ねるところだったが、使徒Tifatisの機転で手中にすることが出来た。
 用済みとなり、使徒Dunkelの過去の汚点でしかなくなった僧院の爺Tolbaは、自らの手で切り捨てる事が出来た。利用してきた冒険者たちが無知な罵声を浴びせたが、無力な抗議ほど可笑しいものはない。

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 三つの祭器は使徒Dunkelの手の中にある。
 目的が果たされるときは、近い。











 "虚無の死霊術師"Storasの幼い横顔には、笑みが浮かんでいた。
 その笑みを見つめる、使徒Tifatisもまた。


○●○


「………過去の汚点は、消し去るのみ」
 陣を巡らせ、三つの要に安置した祭器の輝きは、何処か弱々しいものだった。何かの鼓動のように揺らめきつつも、一吹きで消えてしまう蝋燭の灯りのように小さく、儚い。

 それでも、使徒Dunkelの口元に浮かぶ笑みは力強く、喜びに満ちていた。

 崩れ落ちた建物。
 腐り果てた大地。
 全ては一つの教本を元に、三つの祭器が為しえた技である。
「だが、まだだ」
 使徒Dunkelの声は強く、そして揺るがない。
「力が足りぬ。操る我の腕も、まだ未熟」

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 鋭い眼光の先には、朽ち果てようとする過去の汚点のみが写る。そこに居たはずの男の事など、もはや使徒Dunkelにとって何ほどの価値も無い。
「………どのようにして集めるおつもりですの?」
「手段はある」
 いつの間にか傍らに在る使徒Tifatisの問いに、手に一つの教本をしながら答える。
「なに、簡単なことだ…………」


○●○


「やれやれ。退屈しのぎにもならなかったね」
 甲高い声。
 微妙に散らかった広間。大理石の床を覆う豪勢な絨毯のあちらこちらに、無造作に投げ散らした品々が転がっている。
「ねぇ、そうは思わないかい?」
「わたくしはそれなりに、楽しめましたが」
 絨毯の上に直接座り込み、手にした水晶球でお手玉をするかのように少年は弄んでいる。
「やれやれ。キミって優しいんだねぇ」
「Storas様ほどではありませんわ………使徒Dunkelへの寛大なご処置、わたくしなどでは到底、真似できませんもの」
 そんなことか。と、Storasは声に出して笑う。
「あれで少しは、自分の力もわかっただろうしね。良い薬になったんじゃないのかい?」
 言い放つ少年の声音には、一点の曇りも欠片も無い。
 だからこそ怖いのだと、使徒Tifatisもまた微笑みを返す。そんな使徒の内心を知ってか知らずしてか、少年Storasの幼い顔に貼りついた笑顔は微塵も動かなかった。
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 扉をノックする音。

 入りなよ。とかけた主の言葉にのみ従い、銀色の髪をした騎士が適度に散らかった広間へと入ってきた。
 そのまま静かに歩みを進め、感情のこもらない目で唯一の主を見据える。
「ご機嫌だな」
「やあ、何か用かい」
 少年はその無垢な相貌を、男の髪と同じくらい灰色の―もっともそれは輝きが抱かせる印象の一つで、実際は茶色の―瞳に向けた。
「三つの祭器の一つ「斧」は、やはり見つからなかった。冒険者たちが持ち去ったようだ」
「ああ、そのこと」
 『森の騎士と呼ばれた男の残骸』―SilverRayの覇気の無い言葉に、少年の姿をした主は事も無げに手のひらを振って見せた。
「別にいらないよ、あんなもの」
「…そうか」
「だって見た目が趣味じゃないし。それにわざわざ魔力を充電しなきゃ使えないなんて、面倒くさくて仕方ないじゃないか」
 手にしていた祭器の一つ………水晶球【地獄見之玉】を、Storasは無造作に広間の隅へと放り投げる。
 広間を照らし出す魔法の灯りに反射しながら、水晶球は大理石の床に落ち、にぶい音を立てて何処かへと転がり去っていった。
 それを目で追うSilverRayの視線が、わずかに歪んだのをStorasは気付いたが、何の反応も見せることは無かった。
「ま、今回の事はこれでおしまい。Dunkelも今回のことで少しは大人しく、僕の言うことを聞くようになるんじゃないの?」
「…そうか」
「ご明察ですわ」
 内心の考えはどうであれ、二人の使徒は少年の言葉に頷きを返す。
「さて、次はっと」
 ぱん。と叩き合わせた両手を開けば、そこにあるのは一冊の古びた書物。
「こんなことをしてみるのも、また面白いかもね」
 書物を手に微笑む横顔は、半ば透き通るように妖しく輝いている。



                                      End.                           
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by Izumo_FoA | 2006-07-23 21:39 | 三つの祭器~活動報告